知っておきたい:お子さんの生物学的製剤治療中の体調管理、風邪や発熱時の対応について
お子さんのアトピー性皮膚炎の治療に生物学的製剤をご使用になっている、あるいはこれから検討されている親御さんにとって、日々の体調の変化は気になることの一つではないでしょうか。特に、風邪をひいたり熱が出たりしたときに、この治療がどのように影響するのか、どのように対応すれば良いのか、不安を感じることもあるかと思います。
生物学的製剤は、アトピー性皮膚炎の原因となる特定の物質(サイトカインなど)の働きをピンポイントで抑えることで炎症を鎮め、症状を改善させるお薬です。全身の免疫機能を大きく抑制する薬剤とは異なりますが、免疫システムの一部に作用するため、体調が変化した際には注意が必要となる場合があります。
この記事では、お子さんが生物学的製剤による治療を受けている間に、風邪や発熱といった体調不良が起きた際の対応についてご説明します。
生物学的製剤治療中の体調不良:なぜ注意が必要なのでしょうか
生物学的製剤は、免疫の働きに関わる特定の物質に作用することで、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えます。これは、アトピー性皮膚炎の症状を改善するために非常に効果的ですが、同時に体の防御システムの一部にも影響を与える可能性があります。
風邪やその他の感染症にかかった際には、体の免疫システムが働いて病原体と戦います。生物学的製剤がこの免疫の働きの一部を調整している場合、感染症に対する体の反応が通常とは少し異なる可能性が考えられます。そのため、体調不良時には慎重な対応が推奨されるのです。
風邪や発熱といった体調不良が起きたら
お子さんが生物学的製剤による治療中に、風邪の症状や発熱が見られた場合は、まずは落ち着いてお子さんの様子を観察してください。
一般的な風邪の場合と同様に、十分な休息をとらせ、水分をしっかり補給させることが基本となります。しかし、生物学的製剤による治療を受けている場合は、ご自身の判断だけでなく、必ず主治医の先生にご連絡ください。
主治医への連絡が大切な理由
体調不良時に主治医の先生に連絡することは、お子さんの安全な治療継続のために最も重要なステップです。
- 生物学的製剤の投与判断: 発熱や感染症がある場合、生物学的製剤の投与を見合わせる必要があるか、主治医の先生が判断します。体調が悪い時に薬を投与することで、感染症が長引いたり重くなったりするリスクを避けるためです。
- 症状の評価: 先生は、お子さんの症状や体温、普段の様子などを詳しく聞き、生物学的製剤による治療を継続しても問題ないか、あるいは感染症に対する別の治療が必要かを判断します。
- 他の薬との飲み合わせ: 風邪薬や解熱剤など、他の薬を使用したい場合も、生物学的製剤との飲み合わせや体調への影響について、必ず主治医の先生または薬剤師にご確認ください。
主治医に伝えるべきこと
主治医に連絡する際は、以下の情報を整理しておくとスムーズです。
- いつからどのような症状が出ているか(例:〇月〇日から鼻水、咳、〇月〇日の夜から熱)
- 現在の体温(最高体温とその時間も)
- 他に気になること(食欲がない、だるそうにしているなど)
- 生物学的製剤の次回の投与予定日
- 現在、生物学的製剤以外に内服している薬や使用している外用薬(市販薬を含む)
熱がなくても、普段と違う様子や気になる症状がある場合は、遠慮なく主治医にご相談ください。
体調不良時の受診について
症状が重い場合や、数日経っても改善しない場合、あるいは症状が急に悪化した場合は、かかりつけの医療機関を受診してください。その際、お子さんが生物学的製剤による治療を受けていることを必ず医師に伝えてください。お薬手帳などを持参すると良いでしょう。
日頃からの体調管理の工夫
生物学的製剤による治療中に限らず、お子さんの日頃からの体調管理は大切です。
- 手洗い・うがい: 外から帰ったら手洗いとうがいを徹底しましょう。
- 十分な睡眠: 規則正しい生活を心がけ、しっかり睡眠時間を確保してください。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの良い食事で体の抵抗力を維持することが重要です。
- 人混みを避ける: 流行期には、可能な範囲で人混みを避ける工夫も有効です。
これらの基本的な感染予防策に加えて、お子さんの日々の体調の変化に注意を払い、何かいつもと違うと感じたら、早めに主治医に相談することが、安心して治療を続ける上で大切です。
まとめ
お子さんが生物学的製剤によるアトピー性皮膚炎の治療を受けている期間中に、風邪や発熱などの体調不良が起きた場合は、一人で判断せず、必ず主治医の先生にご連絡ください。体調不良時の適切な対応は、お子さんが安全に治療を続け、アトピー性皮膚炎の症状をより良く管理していくために非常に重要です。日頃からお子さんの体調を注意深く見守り、気になることがあればいつでも主治医に相談できる関係を築いていくことが大切です。