知っておきたいアトピー新薬

アトピー性皮膚炎のお子さん、生物学的製剤治療中に他の病気にかかったら? 受診時の注意点と薬の併用

Tags: 生物学的製剤, 子供のアトピー, 副作用, 感染症, 薬の飲み合わせ, 受診

はじめに

お子さんがアトピー性皮膚炎の生物学的製剤治療を開始された後、「もし風邪をひいたらどうしよう」「他の病気にかかった場合の薬は飲めるのだろうか」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。生物学的製剤は免疫に関わるお薬ですので、他の病気にかかった場合の対応について、事前に知っておくことは大切です。

このページでは、生物学的製剤治療中にお子さんが他の病気にかかった場合の一般的な注意点や、他の薬との飲み合わせ、そして受診時に医師に伝えるべきことについて解説します。

生物学的製剤と免疫機能について

アトピー性皮膚炎の治療に用いられる生物学的製剤は、特定のサイトカイン(免疫細胞から分泌される情報伝達物質)の働きをブロックすることで、皮膚の炎症を抑えるお薬です。これにより、これまでの治療では十分に改善が見られなかった重症のアトピー性皮膚炎の症状を大きく改善させることが期待できます。

一方で、サイトカインは体の免疫システムにおいて重要な役割を果たしています。生物学的製剤によってこれらのサイトカインの働きを調整することは、免疫機能の一部に影響を与える可能性がある、という点を理解しておくことが重要です。

生物学的製剤治療中に他の病気にかかったら

お子さんが生物学的製剤治療中に、アトピー性皮膚炎とは関係のない他の病気にかかることも当然あります。風邪、インフルエンザ、胃腸炎、怪我など、様々な状況が考えられます。

基本的な対応としては、生物学的製剤を使用していないお子さんと同様に、かかりつけ医(アトピー性皮膚炎の主治医とは別の医師の場合もあります)に相談し、適切な診断と治療を受けることになります。

ただし、生物学的製剤治療を受けていることは、受診時に必ず医師に伝えるべき重要な情報です。

受診時に必ず伝えるべきこと

お子さんがアトピー性皮膚炎の生物学的製剤治療中に他の病気で医療機関を受診される際は、以下の点を医師に正確に伝えてください。

これらの情報をもとに、医師は適切な治療方針を判断します。

他の薬との飲み合わせについて

生物学的製剤と他の薬(風邪薬、解熱鎮痛剤、抗生物質など)との飲み合わせについては、お子さんの体調や病気の種類、使用している生物学的製剤の種類によって判断が異なります。

自己判断で、市販薬を含めた他の薬を生物学的製剤と併用することは避けてください。必ず受診した医師に、生物学的製剤治療中であることを伝え、他に飲むべき薬があるか、あるとすればどのような薬が良いかを確認してください。

医師は、生物学的製剤治療への影響や、薬同士の相互作用の可能性などを考慮して、最も安全で効果的な治療法を選択してくれます。

治療の継続または一時中断の可能性

他の病気の種類や重症度によっては、その病気の治療を優先するために、生物学的製剤の投与を一時的に見合わせる、あるいは中断する必要がある場合があります。例えば、感染症にかかっている場合などは、免疫を調整する生物学的製剤が病状に影響する可能性があるため、医師の判断で投与を延期することがあります。

生物学的製剤の投与を継続するか、一時中断するかについても、必ずアトピー性皮膚炎の主治医または受診した医師の指示に従ってください。自己判断での投与中断は、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があるため危険です。

感染症への注意

生物学的製剤の種類によっては、特定の感染症にかかりやすくなる可能性が指摘されています。これは、アトピー性皮膚炎の治療に効果的な免疫の働きを調整するためです。

治療中に注意したい感染症には、特定の細菌やウイルスによるものがあります。発熱、倦怠感、いつもと違う皮膚の症状(水ぶくれが増えるなど)、咳、息苦しさなど、普段と異なる体調の変化が見られた場合は、速やかに医療機関に相談してください。

日頃から、手洗いやうがいを励行し、人混みを避けるなど、感染症予防に努めることも大切です。また、予防接種については、種類によって生物学的製剤治療中に接種できるものとできないものがありますので、事前に必ず主治医にご相談ください。(予防接種についての詳細は、別の記事でも解説しています。)

まとめ

お子さんがアトピー性皮膚炎の生物学的製剤治療中に他の病気にかかったとしても、過度に心配する必要はありません。重要なのは、他の医療機関を受診する際に、必ず生物学的製剤治療中であることを医師に伝えることです。

使用している生物学的製剤の種類や投与状況、お子さんの全身状態を正確に伝えることで、医師は生物学的製剤治療への影響も考慮した上で、最も安全で適切な治療を提供してくれます。

もし不安なことや疑問なことがあれば、まずはアトピー性皮膚炎の主治医に相談してください。日頃からお子さんの体調をよく観察し、何か変化があればすぐに医療機関に連絡することが大切です。