アトピー性皮膚炎の生物学的製剤治療中、日常生活で気をつけることは?
アトピー性皮膚炎のお子様が生物学的製剤による治療を開始された後、皮膚の状態が改善していく中で、日常生活での過ごし方について様々な疑問や不安をお持ちの親御さんもいらっしゃるかもしれません。
この新しい治療法は、アトピー性皮膚炎の炎症を引き起こす特定の物質の働きをピンポイントで抑えることで、これまでの治療では難しかった症状の改善が期待できます。しかし、治療を受けているからといって、全ての注意が不要になるわけではありません。
ここでは、お子様が生物学的製剤による治療を受けながら、健やかな日常生活を送るために親御さんが知っておきたいことや、日頃から心がけていただきたい点について解説します。
生物学的製剤治療中の効果と日常生活への影響
生物学的製剤による治療は、多くの場合、皮膚の炎症やかゆみを大きく軽減させることが期待できます。これにより、お子様が夜ぐっすり眠れるようになったり、日中かゆみに悩まされることが減ったりと、日常生活の質(QOL)が向上することが期待されます。
皮膚の状態が安定することで、これまで控えていた活動(運動、プールなど)にも参加しやすくなるかもしれません。しかし、治療中であるという点を理解し、いくつかの点に配慮しながら生活を送ることが大切です。
日常生活における具体的な注意点と心がけ
1. 感染症予防について
生物学的製剤の中には、免疫の働きの一部を調整するものがあります。このため、感染症にかかりやすくなる可能性や、かかった場合に重症化する可能性が指摘されています。しかし、過度に心配する必要はありません。日頃から感染症予防を心がけることが重要です。
- 手洗いとうがい: 外出から帰った際や食事の前など、こまめに手洗いとうがいを行いましょう。
- 人混みを避ける: 流行性の感染症がM流行している時期は、可能な範囲で人混みを避けることも有効です。
- 体調の変化に注意: 発熱、咳、のどの痛みなど、体調の変化が見られた場合は、早めに医療機関を受診し、生物学的製剤による治療を受けていることを医師に伝えてください。
2. 予防接種について
生物学的製剤による治療を受けている場合、予防接種の種類によっては注意が必要です。
- 生ワクチン: BCG、麻しん風しん混合(MR)、水痘、おたふくかぜなどの生ワクチンは、治療開始前または治療を一時中断して接種する必要がある場合があります。
- 不活化ワクチン: インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの不活化ワクチンは、通常は接種可能です。
予防接種を検討する際は、必ず事前に主治医の先生にご相談ください。お子様の状態や使用している製剤の種類に応じて、適切な接種時期や可否についてアドバイスを受けることができます。
3. 学校生活について
皮膚の症状が改善することで、学校生活での制約が減り、より活動的に過ごせるようになります。体育や部活動への参加も可能になることが多いですが、いくつか気にかけていただきたい点があります。
- 汗対策: 運動で汗をかいた後は、そのままにせず、シャワーを浴びるか、清潔なタオルで優しく拭くなどして、皮膚を清潔に保つことが大切です。
- プールの利用: 皮膚の状態が良ければ、プールの利用も可能になる場合があります。プールの水に含まれる消毒成分が肌への刺激になることもあるため、泳いだ後はシャワーで塩素を洗い流し、しっかりと保湿を行いましょう。プールの利用については、念のため主治医にご相談いただくと安心です。
- 学校との連携: 必要に応じて、学校の先生にお子様の病状や治療について説明し、理解と協力を得ることも有効です。体調が優れない時など、無理のない範囲で活動できるよう配慮をお願いできます。
4. スキンケアの継続について
生物学的製剤による治療で皮膚の状態が良くなったとしても、これまでの基本的なスキンケア(保湿剤や医師から指示された外用薬の使用)は継続することが非常に重要です。
生物学的製剤は炎症の根本に作用しますが、皮膚のバリア機能を完全に回復させるわけではありません。保湿剤で皮膚に潤いを与え、バリア機能をサポートすることで、再燃を防ぎ、より良い状態を維持することができます。外用薬についても、症状に応じて適切に使用することが、良好な皮膚の状態を保つ上で大切です。スキンケアの方法や外用薬の使用量・頻度については、自己判断せず、必ず主治医の指示に従ってください。
5. 食事について
アトピー性皮膚炎の治療において、特定の食品を無闇に制限することは推奨されていません。生物学的製剤による治療中も同様です。食物アレルギーがある場合は、医師の指導のもと適切な対応が必要ですが、そうでない場合は、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。偏りのない食事は、お子様の健やかな成長と全身の健康維持につながります。
定期的な受診と主治医とのコミュニケーション
生物学的製剤による治療は、定期的な通院が必要です。この機会を利用して、お子様の皮膚の状態や全身の体調、日常生活で気になっていること、治療に関する疑問や不安などを主治医に遠慮なく相談してください。
些細なことだと思っても、主治医にとっては治療方針を調整する上で重要な情報となる場合があります。特に、普段と違う症状が現れた場合や、副作用が疑われるような変化に気づいた場合は、次の定期受診を待たずに連絡することも検討しましょう。
まとめ
アトピー性皮膚炎の生物学的製剤による治療は、お子様の皮膚症状を大きく改善させ、生活の質を高める可能性を秘めた治療法です。治療の効果を最大限に引き出し、お子様が安心して毎日を過ごせるよう、日頃から感染症予防、適切なスキンケアの継続、そして体調の変化に注意を払うことが大切です。
そして何よりも、主治医の先生との密なコミュニケーションが重要です。お子様の治療について疑問や不安があれば、一人で抱え込まずに必ず主治医にご相談ください。お子様にとって最善の治療を進めていくために、医師と協力して病気と向き合っていきましょう。