知っておきたいアトピー新薬

お子さんのアトピー、生物学的製剤治療中に他の病気や医療処置が必要になったら?

Tags: アトピー性皮膚炎, 生物学的製剤, 副作用, 感染症, 手術, 歯科治療, 治療中の注意点, 子供のアトピー

はじめに

アトピー性皮膚炎のお子さんが生物学的製剤による治療を受けられている中で、アトピー以外の病気にかかったり、怪我や他の理由で手術や歯科治療などの医療処置が必要になることがあるかもしれません。

生物学的製剤は、特定のサイトカインという物質の働きを抑えることでアトピー性皮膚炎の炎症を鎮めるお薬です。これは免疫システムの特定の働きを調整することにつながるため、他の病気や医療処置に影響を与える可能性がないか、親御さんとしては不安を感じることもあるかと思います。

このコラムでは、生物学的製剤治療中に他の病気にかかった場合や、手術など他の医療処置が必要になった場合に知っておきたいこと、そしてどのように対応すれば良いかについて解説します。

生物学的製剤治療中に他の病気にかかった場合

お子さんが生物学的製剤による治療を受けている間に、風邪やインフルエンザ、胃腸炎といった一般的な感染症にかかることは十分に考えられます。

生物学的製剤の種類によっては、免疫の一部の働きを抑えることで、感染症にかかりやすくなる、あるいはかかった場合の症状が重くなる可能性が指摘されることもあります。しかし、多くの場合、軽度な感染症であれば通常通り生物学的製剤の投与を継続できることも少なくありません。

重要なのは、お子さんの様子がいつもと違うと感じたり、発熱などの症状が現れたりした際には、早めに医療機関を受診することです。その際、アトピー性皮膚炎で生物学的製剤による治療を受けていることを、必ず受診した医師に伝えてください。

医師は、お子さんの全身の状態や感染症の種類、重症度、現在受けている生物学的製剤の種類などを総合的に判断し、生物学的製剤の投与を一時的に休薬するか、他の治療薬を併用するかなどを決定します。自己判断で生物学的製剤の投与を中止したり、新たな薬を始めたりすることは避けてください。

手術や大きな医療処置が必要になった場合

アトピー性皮膚炎とは関係なく、怪我や他の病気のために手術が必要になったり、全身管理が必要な検査や処置を受けることになった場合、生物学的製剤の投与について特別な検討が必要になることがあります。

生物学的製剤の種類や手術の内容(全身麻酔を伴うか、出血のリスクはどうかなど)、お子さんの全身状態によっては、手術や処置の前に生物学的製剤を一時的に休薬することが推奨される場合があります。これは、生物学的製剤が免疫機能に影響を与えることで、手術部位の感染リスクを高めたり、傷の治りを遅くしたりする可能性が懸念されるためです。

手術が決まったら、または可能性が出てきた段階で、必ずアトピー性皮膚炎の主治医と、手術や処置を担当する医師の両方に、現在生物学的製剤による治療を受けていることを伝えてください。両方の医師が連携を取り合い、生物学的製剤の休薬の必要性、適切な休薬期間、そしていつ治療を再開できるかなどを慎重に判断します。

歯科治療や比較的小さな処置の場合

抜歯を伴う歯科治療や、皮膚科での簡単な小手術など、比較的小さな医療処置の場合でも、出血や感染のリスクがないわけではありません。

通常、日常的な歯科検診や虫歯治療などであれば、生物学的製剤の投与に影響しないことがほとんどです。しかし、抜歯や歯茎の手術など、出血を伴ったり感染のリスクがやや高い処置を受ける場合は、念のため歯科医師に生物学的製剤治療中であることを伝えておくのが安心です。必要に応じて、アトピー性皮膚炎の主治医と歯科医師が連携して方針を確認することもあります。

ご不安な点があれば、処置を受ける前に必ずアトピー性皮膚炎の主治医に相談してください。

他の病気で新たに薬が処方される場合

生物学的製剤による治療を受けている間に、アトピー性皮膚炎以外の病気で別の医療機関を受診し、新たな薬が処方されることもあるかもしれません。

この場合も、受診した医師に生物学的製剤による治療を受けていることを必ず伝えてください。生物学的製剤と他の薬剤との間に、予期せぬ相互作用がないかを確認するためです。多くの場合、問題なく併用できることが多いですが、安全のために医師に情報提供することが重要です。

可能であれば、お薬手帳などを利用して、現在使用している全てのお薬(生物学的製剤、アトピー性皮膚炎の外用薬、保湿剤、そして他の医療機関で処方された薬など)を医師に正確に伝えるように心がけてください。

まとめ

お子さんが生物学的製剤治療中に、アトピー以外の病気にかかったり、手術などの医療処置が必要になったりすることは十分に起こり得ます。そのような状況に直面した際に最も大切なことは、関係する全ての医療従事者(アトピー性皮膚炎の主治医、かかりつけ医、手術を担当する医師、歯科医師など)に、現在生物学的製剤による治療を受けていることを正確に伝えることです。

自己判断で生物学的製剤の投与を中断したり、変更したりすることは、アトピー性皮膚炎の状態を悪化させる可能性もあるため避けてください。必ず医師の指示に従うようにしてください。

どのような状況であっても、不安を感じたら遠慮なくアトピー性皮膚炎の主治医や、受診した医療機関の医師、薬剤師に相談してください。お子さんが安心して、安全に治療を継続できるよう、医療チームがサポートしてくれます。