アトピー性皮膚炎の生物学的製剤:治療を受けるまでの流れを知っておきましょう
アトピー性皮膚炎の新しい治療法として、生物学的製剤に注目が集まっています。これまでの治療法で十分な効果が得られなかった場合などに、生物学的製剤が選択肢の一つとなることがありますが、実際に治療を始めるまでにはいくつかのステップがあります。
このセクションでは、アトピー性皮膚炎で生物学的製剤による治療を検討する際に、どのような流れで進むのか、診断や治療開始前の検査などについてご紹介いたします。
生物学的製剤はどのような方が対象となるのでしょうか?
生物学的製剤は、すべてのアトピー性皮膚炎の方に用いられるわけではありません。一般的には、以下の基準を満たす場合に検討されることが多いです。
- 中等症以上のアトピー性皮膚炎であること
- これまでの標準的な治療法(ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、シクロスポリン内服薬など)を一定期間適切に行っても、十分な効果が得られない場合
- 年齢に関する基準(製剤によって対象年齢が異なります)
これらの基準はあくまで目安であり、個々の患者さんの症状の程度、これまでの治療経過、合併症の有無などを総合的に判断して、医師が治療の必要性を判断します。
生物学的製剤による治療を検討する際のステップ
生物学的製剤による治療を検討し、実際に開始するまでには、通常以下のようなステップを経て進んでいきます。
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主治医への相談 まず、現在のアトピー性皮膚炎の状態や、これまでの治療で感じていることなどを主治医に率直に相談することから始まります。生物学的製剤に興味があることや、治療の選択肢について詳しく知りたいといった希望を伝えてみましょう。
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アトピー性皮膚炎の状態の評価 医師は、現在の皮疹の範囲や重症度、かゆみの程度、睡眠への影響など、アトピー性皮膚炎の全体的な状態を詳しく評価します。また、これまでの治療内容(使用した薬剤の種類、使用期間、効果など)についても確認します。これにより、生物学的製剤が適切な治療選択肢となり得るかを判断します。
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治療前の検査 生物学的製剤による治療を開始する前に、いくつか必要な検査が行われることが一般的です。これは、治療を開始しても問題がないか、あるいは治療を開始する上で注意すべき点がないかを確認するためです。
- 感染症のスクリーニング: 生物学的製剤は免疫の働きを調整するため、結核やB型肝炎、C型肝炎などの感染症にかかっているかどうかを確認する検査が行われることがあります。これらの感染症が活動している場合、生物学的製剤の使用によって症状が悪化する可能性があるため、必要に応じて治療を優先したり、注意深く投与したりします。
- 血液検査: 全身の状態や、肝臓・腎臓の機能などを確認するための一般的な血液検査が行われることがあります。
- その他の検査: 製剤の種類や患者さんの状態によっては、胸部レントゲン検査など、追加の検査が必要となる場合があります。
これらの検査は、安全に治療を受けていただくために非常に重要です。
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生物学的製剤についての説明と同意 医師から、検討している生物学的製剤の種類、作用の仕組み、期待できる効果、考えられる副作用、投与方法(皮下注射など)、治療期間、費用などについて詳しい説明を受けます。疑問点や不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。説明内容を十分に理解し、納得した上で、治療を開始することに同意します。
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治療開始 必要な検査が終わり、医師との話し合いを経て治療開始の同意が得られれば、いよいよ生物学的製剤による治療が始まります。
医師とのコミュニケーションが大切です
生物学的製剤による治療は、これまでの治療法とは異なる作用を持つ新しい治療法です。治療を検討する段階から、治療開始後、そして治療を続けていく間も、医師や医療スタッフとの密なコミュニケーションが非常に重要になります。
- 現在の症状や、これまでの治療で困っていることを具体的に伝える
- 生物学的製剤について、不安に思っていることや疑問点を質問する
- 治療開始後、体の状態や皮疹の変化、気になる症状などを速やかに報告する
これらのコミュニケーションを通じて、医師は一人ひとりの患者さんに最適な治療方針を立て、安全に治療を進めることができます。
まとめ
アトピー性皮膚炎で生物学的製剤による治療を検討する際には、現在の状態の正確な評価、治療開始前の必要な検査、そして医師からの丁寧な説明と十分な話し合いを経て進んでいきます。
これらのステップは、生物学的製剤の治療を安全かつ効果的に行うために欠かせない過程です。不安を感じることもあるかもしれませんが、疑問な点はその都度医師に確認し、納得して治療に臨むことが大切です。
生物学的製剤に関する情報は日々更新されています。ご自身の、あるいは大切なお子様のアトピー性皮膚炎の治療について、ご不明な点やご心配なことがあれば、まずは主治医にご相談ください。