知っておきたい:思春期のアトピー性皮膚炎と生物学的製剤治療 — 成長による変化と薬のこと
お子さんのアトピー性皮膚炎の治療に、生物学的製剤を選択されている、あるいは検討されている親御さんもいらっしゃるかと思います。生物学的製剤によって症状が大きく改善し、日常生活の質が向上したというお子さんも多くいらっしゃいます。
しかし、お子さんが成長し、特に思春期を迎えるにあたっては、アトピー性皮膚炎の症状や治療への向き合い方にも変化が出てくることがあります。生物学的製剤治療を継続していく上で、思春期ならではの注意点や、お子さんとの関わり方について不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、思春期のアトピー性皮膚炎の特徴や、生物学的製剤治療を継続していく上で知っておきたいポイントについて解説します。
思春期にアトピー性皮膚炎の症状はどう変わる?
思春期は、体だけでなく心も大きく変化する時期です。ホルモンバランスの変動が大きくなり、これがアトピー性皮膚炎の症状に影響を与えることがあります。個人差はありますが、症状が一時的に悪化したり、分布が変わったりすることがあります。
また、学業や友人関係、部活動など、生活環境が変化し、精神的なストレスが増えることも少なくありません。睡眠不足や食生活の乱れなども加わり、アトピー性皮膚炎の症状に影響することが考えられます。
生物学的製剤治療は思春期も継続できる?
現在、小児のアトピー性皮膚炎に対して使用されている生物学的製剤の一部は、一定の年齢以上で使用が承認されており、思春期のお子さんも適応となる場合があります。生物学的製剤による治療は、長期的な視点で皮膚の状態を安定させ、炎症を抑えることを目指します。
思春期にアトピー性皮膚炎の症状が不安定になりやすいからこそ、生物学的製剤による治療を継続し、良好な状態を維持することが重要になる場合があります。症状が落ち着いていることで、学業や部活動、友人との交流など、多感な時期の生活を前向きに送れることにつながる可能性があります。
ただし、お子さんの成長に伴い、体重が増加することなどにより、薬の量の調整が必要になる場合もあります。必ず医師の指示に従い、定期的な診察で相談しながら治療を進めてください。
治療の自己管理への移行について
生物学的製剤治療は、多くの場合、皮下注射によって行われます。小児期は親御さんが注射を行っている場合でも、思春期に入ると、お子さん自身が自己管理、あるいは自己注射を行うことが選択肢となることがあります。
自己管理への移行は、お子さんの自立を促す上で大切なステップとなり得ますが、責任が伴うため、慎重に進める必要があります。自己注射の手順をしっかりと習得し、決められた間隔で忘れずに投与すること、使用済み注射器の適切な処理など、学ぶべきことは少なくありません。
無理強いはせず、お子さんの理解度や意欲を見ながら、医師や看護師と相談して段階的に進めることが推奨されます。親御さんのサポートは引き続き不可欠です。
思春期ならではの治療に関する悩み
- 学校生活や友人関係: 症状が気になるために、体育の授業や水泳、修学旅行などをためらったり、友人関係に消極的になったりすることがあります。症状が安定することで、こうした悩みは軽減されることが期待できます。学校の先生に病状や治療について理解を求めることも有効な場合があります。
- 副作用への不安: 生物学的製剤の副作用(注射部位反応、頭痛など)は、思春期のお子さんでも起こり得ます。思春期に特有の副作用リスクが大きく異なるという明確な報告は現時点ではありませんが、何か気になる症状があれば、自己判断せず必ず医師に相談してください。
- 治療継続へのモチベーション: 毎日(あるいは決まった間隔で)治療を続けることが面倒に感じたり、症状が落ち着いていると治療の必要性を感じなくなったりすることがあります。治療を中断すると症状が悪化する可能性があることを理解してもらい、治療の重要性について親子で話し合うことが大切です。
医師とのコミュニケーションが重要
思春期のお子さんのアトピー性皮膚炎治療を進める上で最も重要なのは、お子さん自身、そして親御さんと医師との密なコミュニケーションです。
- お子さんの体の変化や、アトピーによる精神的な負担、学校生活や友人関係の状況などを医師に具体的に伝えること。
- お子さん自身の治療に対する気持ちや、自己管理への意欲を医師に相談すること。
- 今後の治療計画や目標について、お子さん本人も交えて話し合うこと。
お子さんが主体的に治療に関わるようになることは、長期的な管理において非常に重要です。医師は、お子さんの成長段階や個々の状況に合わせて、最適な治療法やサポート体制を提案してくれます。
まとめ
思春期は、アトピー性皮膚炎のお子さんにとって、症状や治療への向き合い方に変化が生じやすい時期です。生物学的製剤治療は、この時期も症状を安定させ、お子さんが健やかに成長し、前向きな学校生活・社会生活を送るための力となる可能性があります。
治療の継続や自己管理への移行には、お子さんの理解と親御さんのサポート、そして医師との連携が不可欠です。不安なことや疑問点があれば、ためらわずに医師に相談し、お子さんにとって最善の治療法を見つけていきましょう。
この記事が、思春期のお子さんを持つ親御さんの参考になれば幸いです。